◆第二回小町伝説公演 舞台写真◆ 写真・飯塚美砂
写真をクリックすると大きくなります。



写真をクリックすると大きくなります。


「小町伝説」楽屋
昼夜の間が30分しかないので、
もう必死です!
「小町伝説」楽屋
手を塗るのもひと苦労、
開演が迫ってます!


第二回「小町伝説」公演製作日誌
 

2月14日(土) 
夕刻  歌舞伎座楽屋口
浅香氏より「白夜小町」の準備槁がやっと届く。やっとである!三島張りの膨大な台詞!言葉の洪水!浅香氏渾身の力作だが・・・・・、これを今から覚えろと言うのか!鬼〜っ!嗚呼!

2月16日(月)
18:30 銀座「移山」
鈴木氏と「通小町」の台本の最終的なチェック。作曲は一応仕上がっているので、全体のイメージに問題はないが、問答のくだりの運びと、風流踊りの囃子事というニュアンスを出すのがやはり難しい。
2月19日(木)
13:00  新富町日本演劇衣裳
見世衣裳と衣裳合わせ。「白夜小町」は時間の推移があるから、全員2度から3度は着替えたいし、また「通小町」もふたりとも時代から世話に引き抜くので、あたまの中を算盤が駆け巡る製作の佐藤氏は泣きである。
2月20日(金)
18:30  銀座「でん八」
中嶋氏、浅香氏、佐藤氏と装置について打ち合わせ。「白夜小町」はやはりラストの芍薬の処理をどうするか議論百出、ケンケンガクガク!「通小町」も私のイメージがなかなか中嶋氏に伝わらず、また私の言葉足らずからまとまらない。胃が痛くなった。
2月23日(月)
20:30  渋谷某店
新人の結城淳君が稽古に入る前に、台本の読み方や心構えを教えてほしいというから、一杯飲みながら、ひとこと先輩面してアドバイスした、「自然体で臨めよ」と。結城君は未知数だが、キャラクターはいいのだから、あとはいかに精進するかだ。
2月25日(水)
11:00  人形町鴨治ビル  頭(かつら)合わせ
いつに変わらぬ鴨治の会長の親身になってのアドバイスと我々のやっていることを面白がってくれるお気持ちは、ほんと、言葉に表せないほどありがたく、身に沁みる。小町のかしきのクリ(生え際)は全体のバランス、疱瘡の傷跡などなかなか難しい。
2月26日(木)
20:30  黒門会館−花柳基氏稽古場−
「通小町」いよいよ稽古初め。勝友先生が絶妙な振りをテキパキと瞬時に付けて下さり、基さんがそれに応えて、どんどん作品が成立して行く。私は素晴らしき振付の師と素晴らしき共演者に恵まれた。稽古のあとのビールの美味いこと!
2月27日(金)
16:00  人形町鴨治ビル
「白夜小町」の顔合わせ、本読み。やっとこの日が来た。皆、浅香氏の難解な台詞に四苦八苦。だが、共演者の方々の熱意がひしひしと感じられて、私も製作の佐藤氏も心から嬉しく思った。芝居はやはりチームワーク、アンサンブルである。
3月1日(月)
18:00  黒門会館
「通小町」振り渡し終了。「逢夢小町」以上にたいへんだ。9日までにキチンと憶えてこねば!
3月4日(木)
19:00  赤坂おかもと
師(雀右衛門)から呼び出しを食らって、こんどの「小町公演」について詳細を根堀り葉掘り聞かれて報告する。私は師のもとにいるから、こういった公演が出来るのだ。その幸せは骨身に沁みて感じている。私のこういった活動を心から応援して下さり、前向きな姿勢として評価して下さる。そして結果が悪ければ容赦ない苦言を呈して下さる。師は弟子のことを真剣に見ていて下さる。人の上に立つ人間の手本みたいな人だ。公演にも必ず足を運んで下さる。弟子の勉強会に顔も出さない師匠が多い中、だが、師は「弟子の舞台を師匠が見るのは当たり前」と言い切る。私は雀右衛門の弟子で本当に良かったと思う。

以下、次号。

 


私の化粧前です
公演成功祈願のお守りが3つ!
「通小町」の引き抜きの衣裳付け
真ん中でセパレーツになっています。
5人掛りの大仕事です!
第二回「小町伝説」公演製作日誌 其の2
 

3月5日(金) 
19:30  亀井戸天神 某料亭
勝友先生が、「そんなに根を詰めずに、少しはお稽古を忘れてのんびりしなさい」とおっしゃって下さり、春の園遊会ならぬ勝友先生主催の友遊会にお誘い下さる。御門下や坂東流のお仲間を集めての大宴会。勝友先生のお人柄を慕って多くの参会者。坂東流は、年配で手だれの女流の方が多く、皆様意気軒昂で、飲むほど酔うほどにパワーアップ!私もタジタジである。
ショータイムはつばくろ一座が大奮闘!中ではやはり三津右衛門さんの獅子娘と揚巻が傑作!これは一見の価値がある。

3月6日(土)
16:30  人形町 某店
台詞に四苦八苦(汗)の「白夜小町」の稽古のあと、全員で初の食事会。チームワークをたかめる為、こういう場は必要である。台詞が入らないと悩んでいられる柳田さんの欠席が気掛かりだが、それは時間が解決してくれるだろう。やはり、年長の勝見さんと青山さんがチームの潤滑油で、場を和ませてくれる。感謝感謝。
3月9日(火)
20:30  黒門会館  「通小町」稽古。
藤浪小道具の石井さんが注文した小道具を搬入して下さる。作者の鈴木さんが指定した、幾く段にも重ねた桜餅の蒸篭がすべって客席に落ちそうになるが、仕掛けでキチンともとに戻るという難題を、石井さんが見事にクリアーして、皆々賛嘆の声!基さんなど「特許をとりましょう」とまでおっしゃって下さる。凝り性の石井さんの仕事振りに感謝感謝。そのほか、風流踊りにかぶる笠の具合を手直しする程度で、「通小町」の小道具はほぼ完璧。
3月12日(金)
19:30  黒門会館  「通小町」稽古。
振りが固まったので、一寿郎師、巳吉師、伝兵衛師にお集まり頂き、音合わせ。なんとこの度も45分の大作になってしまった。が、掛合いの面白さは抜群。風流踊りの掛かりになにか一工夫欲しいとの勝友先生のご提案により、皆で協議の末、壬生双盤(当り鉦)を入れることに決定。効果絶大で、いい感じである。後半は息が切れて私も必死だが、「ええ、ままよ!倒れるまで踊り抜くぞっ!」と自分を励まして、吹き出る汗を拭った。
3月15日(月)
11:30  人形町鴨治ビル  「通小町」付立稽古、続いて顔寄せ、のち「白夜小町」付立稽古。
本日より出演者、スタッフ全員の顔が揃う。いよいよラストスパートである。「白夜小町」の膨大な台詞はちょっとでも集中力を欠くとつまずいてしまうが、内藤氏の的確な効果音に助けられると、気持ちが出来て、台詞がすーっと出てくるから大いに助かる。舞台は総合的なるものの所以。浅香氏は演出で、小町の出を最初御簾を上げておいて、少将の出で下ろそうかと主張されたが、私はそれはやはり常套的過ぎるので、第2場の小町は全て御簾内にすべきと主張した。こういう実験劇だし、私はこの試みはよかったと思っている。
明日は総浚い、明後日は舞台稽古、そして3日後はもう初日である。


「白夜小町」と「通小町」の台本
そしてプログラムです。
台本には私の千社札が貼ってあります。
「白夜小町」の転換中、
下手の袖で出を待っています。
床山の細野さんとお手伝いの大鶴さんです。
第二回「小町伝説」公演製作日誌 其の3
 

3月17日(水)
15:00 日本橋劇場
「白夜小町」の初日通り舞台稽古。場数が6杯と多いので、転換と着替えが一苦労。やはり舞台稽古は2日間ほしいところである。規約上、21時30分までに劇場を退出しなければならず、稽古進行はもう必死である。小道具の石井さんもパニック状態で、今日中に「通小町」の小道具も確認したかったが、それどころではなかった。しかし、スタッフ諸氏の集中力は見事で、限られた時間の中での手直しは誠に迅速。

3月18日(木)
11:00 日本橋劇場
「通小町」初日通り舞台稽古。長唄連中が歌舞伎座出勤中なので、稽古を12:30までに終えねばならず、初日の朝も必死の稽古進行である。すったもんだの大道具は中嶋氏の御尽力で予想通りの出来栄え。この狭い舞台に長唄と常磐津の山台がうまく納まった。照明については、いろいろな意見と提案があったが、やはり一切古典的に処理してもらう。これには花柳基氏の賛同を得た。

17:00 初日開幕 
客席の入りが気になるが、一階席はほぼ満席との報告を表方より受ける。初日の幕は無事に下りたが、「白夜小町」が150分、25分の休憩をはさんで「通小町」が45分。明日より昼夜2回公演!作者はそれぞれ思いの丈をぶつけて譲らないが、演じる側は決死の覚悟!何だかずっと決死だの必死だのと言い続けているが、それはまさに実感で、私はご飯も食べられない、嗚呼! 友人の保坂桂一氏がロビーに芍薬のオブジェを提供して下さった。いかにも保坂氏らしい美学に溢れた「小町」にふさわしい見事なもの。終演後、乾杯のビール3杯で目が回った。
3月19日(金)
13:00 二日目昼の部
客足が今一つ。夜の部はさらに良くないという。こういう公演は手売りと口コミ以外はチケット販売は成立し難いものだが、それでも、もう少し世間へ地道に宣伝する必要がある。やることを観てもらい、その成果を問い、その意義を認めてもらうことが大事で、自分達だけで面白がって、自分達だけで楽しんでいると誤解されるのだけは御免蒙りたい。
3月20日(土)
13:00 3日目昼の部
夕べはビールを飲んでそのまま気を失ってしまったが幸い風邪は引かなかった、やれやれ。「通小町」は小道具が多いのと引き抜きが至難なのとで、後見泣かせだが、だいぶスムーズになり手馴れて来た。寿太一郎氏、昌克氏、里次朗氏、吉優亮氏に感謝感謝。私は疲れがピークで昼の部は集中力に欠けたが、「通小町」を踊ると不思議と身体がすっきりして、そのまま夜の部に突入。基氏とは息がピッタリ合う。立ち役に充分踊りこんで貰うと女形は助かるのだ。それは立ち役と女形は本来そういうバランスでいたほうが、お互いよくみえるということである。
3月21日(日)
正午 本日千穐楽。
我ながらよく身体がもったものだと思う。腰痛も幸い出なかった。柳田先輩もとてもお元気で、大詰など滋味溢れる存在感で、やはり出演をお願いしてよかった。夜の部の客席にはなんだか郡司先生が居たような気がした。その先生に喜んで貰おうと「通小町」の幕切れで全員出て、風流踊りよろしくフィナーレを飾ろうと鈴木氏と目論んでいたが、そんな余裕が今一つ気持ち的にでなかったのでやめにした。郡司先生に「だらしがない」と叱られそうである。終演後の打ち上げで、最後まで残って浅香氏、鈴木氏、佐藤氏とじっくり杯を重ねたかったが、身体がもう限界で、どうしようもなくて、倒れそうで、お先に失礼した。それだけが心残りである。(了)

この公演に携わって下さいました関係者の皆様、またご覧下さいました多くの皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
 

(C)Copyright 2001-2006 NAKAMURA KYOZO All Rights Reserved.