2005年3月 欧州歌舞伎舞踊レクチャーデモンストレーション公演報告記
 この度も昨年8月のニュージーランド公演に引き続き、国際交流基金主催、松竹(株)協力による平成16年度日本文化紹介派遣事業の一環で、日EU市民交流年を記念して、欧州4ヶ国7都市全8公演17泊19日間の強行軍である。以下、今回より4回に渉って写真を中心に公演の報告をさせて頂く。


  1、長唄「獅子の乱曲」 獅子の精 五條雅之助
  2、清元「豊後道成寺」 清姫    中村京蔵
     五條詠昇 作・振付
  3、あ な め     小町の亡魂  中村京蔵
                旅の若者   五條雅之助     解説と後見 若柳吉優亮

公演回数 都市(国名) 公演会場、開演時間
3月 9日 第一回公演 インスブルック
(オーストリア)
Congress und Messe Innsbruck GmbH 19:00
11日 第二回公演 ウイ―ン
(オーストリア)
Tanzquartier Wien 19:00
12日 第三回公演 同上 同上
14日 第四回公演 リュブリアナ
(スロベニア)
CANKARJEV DOM 19:00
16日 第五回公演 ベルリン
(ドイツ)
Museum fur Ostasiatische Kunst 20:00
18日 第六回公演 ケルン
(ドイツ)
Japanisches Kulturinstitut 20:00
21日 第七回公演 ローマ
(イタリア)
Sala Sinopoli 21:00
23日 第八回公演 ラベンナ
(イタリア)
Alighieri Theatre 21:00

オーストラリア編
インスブルック
プログラム

3月9日 20時 インスブルック初日 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  雪深いチロル地方の都市だがその雪景色の美しいこと!また、パンも チーズもソーセイジも白ワインもたまらなく美味しい!戸田さんはじめ大使館職員の方々のお力添えにより無事初日開幕。450席満席。手前味噌だが客席の反応が誠によく、イースターフィスティバルの開幕を飾れて、ほっと一安心。だが、まだ初日とは思えぬほど肉体的、精神的に消耗する。寝付きのいいこと!


3月11日 ウィーン第一夜初日 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

 いよいよウィーンでの幕が上がる。この芸術の都で踊ることの幸せと不安と武者震いなどなど様々な思いが交錯して感慨一入。ここタンツクウォーターという劇場は前衛舞踊やモダンダンスなどの専門劇場で、いま新しい芸術の拠点として注目度が高い。果たして二日間共全て満席。舞台の床は少々堅いが、緊密度は抜群でこの度の演目にはピッタリの空間である。終演後、主催者のGareis女史が石橋と豊後道成寺の古典二番がとても良かったとおっしゃって下さったのはあなめで勝負を掛けようとしていた我々には望外の喜びだった。古典が悪かったら公演の意味がないからである。夜半寝入り端にカーテンコールの時のブラボーの歓声を思い出し涙が出た。

ウィーン
プログラム

インスブルック・プログラム
公演記事
ウィーン・プログラム
公演記事

インスブルック
聖ヤコブ寺院(大聖堂)
TVのインタビュー
(通訳は大使館の戸田氏)
終演後のレセプション
路上の広告塔にて
ホテル近くの
素敵なバーの前で
客席にて

ウィーン
王宮中庭にて
豊後道成寺
豊後道成寺
あなめ
あなめ
(旅の若者・五條雅之助氏)
会場のタンツクウォーターの
舞台・客席
テクニカルリハーサル中
ワークショップ
(中央後姿が私)
舞台裏スタッフルームにて
大使公邸にて、梅津大使と
打ち上げパーティーの様子

スロヴェニア編
リュブリャーナ
プログラム

3月14日 20時 リュブリャーナ公演 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  ここスロヴェニア共和国の首都は、中央ヨーロッパのバロック様式を残す旧いが閑かで美しい町。このようなヨーロッパの奥の院?まで来ることなど夢にも思わなかった。人々は今夜の観客も含めて、物静かだがとても知的で文化程度が高い印象を受ける。ここも果たしてソールドアウト。この度はジャパンフィスティバルのオープニングとしての招聘。舞台は奥行が深いので、踊る居所が難しい。しかし、身体が馴れたせいか豊後もあなめも気持ちがスムーズに流れて踊り終えた。開演中、舞台袖で熱心に観ていてくれた大道具方のスタッフが、帰りのバスに乗り込もうとする我々のもとへ走りよって、素晴らしい公演だった、またすぐこの劇場へ来てください、待っていますと言って握手を求め、さっと走りさったその後ろ姿を見送った時は、昼間のリハーサルで疲れてイライラして思わず声を荒ららげてしまった自分を恥じた。今夜が丁度中日、明日からはドイツである。


リュブリャーナ・プログラム
公演記事
リュブリャーナ公演
チラシ

リュブリャーナ
リュブリャーナの大聖堂
舞台稽古の様子
会場の舞台・客席
打ち上げパーティーの様子
リュブリャーナの街並み

ドイツ編
ベルリン プログラム

ケルン プログラム

3月16日 ベルリン公演 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  日本大使館と東アジア美術館の共催による催しで、同美術館内のホールを使用。いわゆる講演会用の小空間だから、設備的には当然ながら不備が多い。しかし、我々はスタッフ共々限られた条件の中で最善の努力を尽くすのみだ。案の定、本番中に照明トラブルや音響トラブルが続いたが、それがとるに足らないことは、観客の集中力を肌で感じれば解る。日本大使館の田中さんによると、いつもは異国の文化に接すると肌に合わないと感じた時は席を立つ観客が多い中で、今回はひとりもいなかったということ。その点、悪条件の中で頑張った甲斐があった。終演後、美味しいドイツ麦酒で乾杯。今回のツアーで日本食が少しも恋しくないのは、行く先々での食べるもの、飲むものが誠に美味しいからで、全く飽きない。しかしながら、よく食べ、よく飲むこの度のツアー一行ではある(笑)

3月18日 ケルン公演 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  ドイツの地方都市だが、オペラから小劇場まで演劇が盛んなところと側聞する。ゴシック様式の大聖堂が見事で、ステンドグラスが美しい。会場は日本文化会館のホールで、設備は不十分だがタッパが高いので気持ち良く踊れそうである。職員の方々は皆さん日本語が達者で、日本の文化をこよなく愛していることがその協力振りで解る。もう春のような陽気で、会館前の公園の池をわたる風が心地よい。桜も芽吹いてきた。観客は誠に熱心で演者としてはやり甲斐十分だが、開演中にそこかしこで動画撮影されるのは困った。こういう公演だから少々のことは致し方ないし、偉そうなことを言うつもりはないが、主催者側は、注意のインフォメーションをして防止対策をするのが礼儀というものだろう。とはいうものの、観客の熱狂振りは嬉しい限り。明日からいよいよイタリアである。

ベルリン公演・プログラム
ケルン公演・プログラム

ベルリン
会場案内の前で
美術館の外観
SOLD OUT!
会場の舞台・客席
床山の細野さん(左)。女性は衣裳の藤戸さん。皆で協力しあう小一座。

ケルン
ケルンの大聖堂(後ろで睨んでいるのは照明の袰主さんです)
ケルンの公園で
会場の舞台・客席
ケルンの大聖堂 壮大な外観と内部

イタリア編
イタリア プログラム

イタリア プログラム

3月21日 イタリア ローマ公演 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  陽光燦燦、初夏のような日差しである。雪のインスブルックで初日を迎えた頃を思えばもう半年も旅に出ているような錯覚にとらわれる。昨日はオフでゆっくり市内見学。2千年のローマ遺跡の存在感にただただ圧倒される。公演会場は1200人収容のコンサートホール。設備的にはなにもかも不備だがしかたがない。イタリア流ののんびりしたスタッフだが、思いの外スムーズでリハーサルも順調。開演一時間前、化粧をしている私の元へ舞監の高久氏が飛んできて、大変なことになっている、会場前には長蛇の列が出来ていて、おそらく入りきれない観客が続出するだろう、との報告を受ける。幕が開いた。まさに超満員!私は今までこんな多くの観客の前で踊ったことなどついぞない。私はいつになく心のバランスを失いかけた。ダメダメ平常心で踊らなくては。舞台は所々段差があって踊りにくい。躓きそうになった私は必死に堪えて右足がつった。がなんとか踊り了えた。幕が下りた。万雷の拍手、カーテンコール四回、私は今夜のこの時を一生忘れないだろう。それと同時に歌舞伎四百年の重みと芸の神様に自分が支えられていることを改めて認識した。親身にお世話して下さった日本文化会館の方々に感謝感謝。さあ、あさってはファイナル、ラベンナ公演である。

3月23日 ラベンナ公演 ▼写真はこちらをご覧下さい▼

  千穐楽である。ここは北イタリアのスタイリッシュなお店が立ち並ぶ長閑な小都市。会場は地元で150年の歴史がある900人収容のオペラ座。所謂、芝居小屋といった感じで、舞台は傾斜があって踊りにくいが雰囲気は抜群である。今宵が楽日だという興奮する気持ちを必死に押さえて舞台に臨む。傾斜舞台に時々足を捕られてバランスを失いかけるが、ここが根性の踏ん張りどころ!豊後道成寺もあなめも無事に踊り踊り了えてカーテンコールに臨む。果たしてここも天井桟敷まで満員御礼の客席を見上げて万感迫る思い。別れ際、劇場主のご家族やスタッフがまた来て下さいと言って笑顔で見送って下さった。感傷的になるのは好きではないが、今夜の舞台は一生忘れられない思い出となるだろう。この度のツアーでお世話になった各地元関係者の皆様に心から御礼申しあげます。そして、私を支えて下さった歌舞伎400年の芸の神様にも……。

イタリア 公演案内
イタリア 公演案内

イタリア ローマ
楽屋で
会場の外観
超満員の観客の前で
真実の口に手をいれて・・・
遺跡の存在感に圧倒

ラベンナ
豊後道成寺 清姫
豊後道成寺
劇場の客席
劇場入口
ラベンナの街並み


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